
|
府のように、能力原則にもとづく課税を、地方政府は行うわけにはいかないのである。
したがって、地方政府は能力原則にもとづく課税と貨幣給付の組み合わせによって、社会防衛を実現するわけにはいかない。しかし、地方政府の供給する現物給付としての公共サービスは、クラブ財ともいわれるように、自発的に形成される地域社会と深く結びついている。そうした現物給付としての公共サービスを、地方政府は地域社会のニーズに対応して供給することができる。
つまり、地方政府は地域社会が「社会」として統合していくのに必要な現物給付を供給していくことによって、社会防衛を果たすことができる。社会福祉、医療、教育、住宅などのように地域社会の多様性を反映した現物給付は住民から遠い政府である中央政府では、そのニーズを的確に把握することができない。そうした現物給付を適切に供給できるのは、地方政府だけである。
このような現物給付は本来、地域社会が構成員の共同作業や相互扶助によって生産し、自己消費してきた財・サービスである。そうした財・サービスの生産と消費により、地域社会は市場経済の荒波から地域社会の構成員の生活を守ってきたのである。
しかし、現在では既に地域社会の機能は縮小し、そうした地域社会の共同作業や相互扶助によって供給されていた財・サービスを、地方政府が供給せざるをえなくなっている。こうした現物給付の供給によって社会を保護することこそ、地方政府に期待されている任務なのである。
3.地方税体系のシナリオ
経済のグローバル化にともなって、地方政府の任務が地域社会の共同作業や相互扶助に代替する現物給付の供給にシフトするとすれば、その財源を調達する地方税などのように変化すると考えられるのだろうか。
既に述べたように、これまでの地方税の課税原則は、利益原則にもとづくものと理解されてきた。しかし、それは地方政府の任務が地域社会の保護にあると考えられてきたからではない。「社会」の保護は中央政府の任務と見倣され、それ故に国税は能力原則にもとづくべきだと想定されていたのである。むしろこれまでは中央政府の任務が「社会」の保護に対して、地方政府の任務は「市場」の保護にあると考えられてきた。つまり、その地域社会における「市場」を保護することこそ地方政府の任務であり、地方税はそうした「市場」の保護の対価として課税されると想定されてきたのである。
「市場」には生産物市場と、要素市場とがある。この二つの市場の取引を、警察や消防などの公共サービスによって、地方政府は保護している。そうした「市場」の保護に対して、利益原則にもとづく租税が望ましいと考えられていたのである。
つまり、要素市場に対する保護への対価として収益税あるいは不動産税が、生産物市場に対する保護への対価として間接消費税が、地方税として整合的だと見倣されてきた。もっとも、間接消費税に関しては課税客体の普遍という観点から、製造段階での課税は望ましくないとして排除されてきた。
ところが、グローバル化にともない地方税が、地域社会の共同作業や相互扶助に代替する現物給付に財源を調達するようになると、こうした「市場」保護の対価として地方税を配分することは整合的ではなくなる。地域社会の構成員に、共同作業や相互扶助の代替として地方税の負担を求める方が望ましいことになる。
そうなると地方税はワークフェアつまり労務提供の性格を帯びる。つまり、地域社会の住民に地域社会のために、一定期間にわたって労働の提供を求める代替として、地方税を課税すればよい。それにはそれぞれの地域住民が一定期間に獲得する所得を、地方
前ページ 目次へ 次ページ
|

|